ファクタリングで違法になるケースとは?判例から学ぶリスクと対策

資金繰りに苦しむ経営者が陥りやすい落とし穴として、違法なファクタリング契約が挙げられます。違法業者と正規業者を見分けるにはどうしたら良いのでしょうか。

本記事では、過去の判例から違法性がどのように判断されるのかを、実際の取引で注意すべき点と共に詳しく解説していきます。安易な判断によって重大なリスクを背負わないために、しっかりと対策しましょう。

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ファクタリングの違法リスク

ファクタリングの違法リスク

ファクタリングをめぐるトラブルが増加しており、知らぬ間に違法な取引に巻き込まれる経営者が後を絶ちません。2023年には1,000件を超える相談が寄せられ、多くの中小企業や個人事業主が標的にされているのです。

一度違法な契約に関与すると、事業継続が危ぶまれる深刻な事態に陥ることも少なくありません。

経営者が違法性を見抜く力を養い、正しい判断を下すことが、事業を守るための第一歩といえるでしょう。

違法となる主なケース

ファクタリング契約が違法と判断されるのは、次の3つのケースです。

1つ目は、返済義務が発生する償還請求権付きの契約です。本来のファクタリングでは返済義務がありませんが、返済を求める条項が含まれる場合は、実質的な融資と判断され、貸金業法に違反します。

2つ目は、高金利が設定された契約です。償還請求権が含まれる契約の場合、手数料名目で実質年利が15パーセントを超える場合は利息制限法違反、20パーセントを超える場合は出資法違反となり、刑事罰の対象となります。表面的には合法に見える契約であっても、実際の金利計算が問題視されるケースが増えているのです。

3つ目は、詐欺に該当する取引です。例えば、架空の債権を契約に含めたり、すでに回収が終わっている債権を買い取らせたりする手口が挙げられます。

特に建設業や運送業では、支払いサイトが長期化しやすい業界特性を悪用した詐欺が目立っているため、警戒を怠らず必要であれば専門家に相談することが大切です。

重要判例から見る違法性判断

ファクタリング契約の違法性をめぐる判例からは、形式上は合法に見える取引が、実質的には違法と判断されるケースが多いことがわかります。

令和2年9月18日東京地方裁判所判決では、償還請求権付きファクタリング契約が争点となり、裁判所は実質的な金銭消費貸借契約であると認定しました。

判決では「債権譲渡の形式をとりながら、実質的には貸付けと同様の経済効果を持つ取引」との判断が示されています。

平成29年3月3日の大阪地方裁判所の判決では、売掛債権の一部買取契約が問題となりました。裁判所は「形式的には債権譲渡契約であっても、実質的に見れば金銭消費貸借契約である」と判断しています。

分割払いの約定がある点や、債権回収リスクを譲渡人が負担している点が重視され、実質的な貸金業務との認定につながりました。

契約を結ぶ際は、表面上の形式に惑わされず、契約の本質を理解することが欠かせません。

違法な業者の特徴と見分け方

まず、警戒すべきは、償還請求権付き契約を提示しながら貸金業登録がされていない業者です。貸金業を営むには金融庁や各都道府県への登録が必須ですが、未登録の業者も多く存在します。登録の有無は、金融庁や自治体の公式ウェブサイトで簡単に確認できますので、契約前に必ず確認しましょう。

契約書の内容が不明瞭だったり、「金銭消費貸借契約」となっていたりする場合は融資契約となり、本来の「債権譲渡契約」とは本質的に異なります。取引の実態がどうなっているかも併せて確認しましょう。正規の業者であれば、契約内容が明確に記載されています。

手数料や金利の計算について、説明が曖昧な業者にも気をつけましょう。手数料は本来、債権額に対するディスカウント率で示されるべきものですが、金利計算を行う場合、実質的な融資とみなされる可能性が高まるのです。

違法業者を見分けるには、業者の特徴を正しく見極めることが大切です。

適切なファクタリング会社の選び方

適切なファクタリング会社の選び方

現在、数多くのファクタリング会社が存在しています。適切な業者選定は単にコストの比較だけでなく、事業の長期的な継続性を確保するためにも欠かせません。経営者として安全な取引を行うため、信頼できる業者を選定する基準を解説していきます。

業界における信頼性の確認

信頼性の高い多くのファクタリング会社は、業界団体に加盟しています。例えば、日本ファクタリング協会などの団体に認定されている業者は、定期的な監査や研修を通じてコンプライアンス意識を高めているのです。団体への加盟状況は、各団体のウェブサイトで公開されているため、確認してみましょう。

さらに、業界団体に加盟している業者は、情報公開にも積極的で、取引内容の透明性が高い点が特徴です。また、加盟業者同士での情報共有を通じて、業界全体の健全性向上にも貢献しているため、業界団体に加盟している業者との取引を基本とすることを推奨します。

契約内容の確認

健全なファクタリング契約では、償還請求権が発生しないことが明記されていますが、返済義務や買戻し条項が含まれている場合は、実質的な融資契約とみなされる可能性があるため気をつけましょう。

また、本来なら支払い条件や債権買取価格、手数料の計算方法が契約書に具体的かつ明確に記載されているはずですが、分割払いを条件とする契約や、債権回収リスクを譲渡人が負担するような条項が含まれている場合は、違法性が疑われるため避けるべきです。

契約内容に少しでも疑問を感じた場合は、ファクタリング会社の担当者に確認するか、契約前に専門家に相談し、リスクを十分に検討したうえで判断することをおすすめします。

なお、担当者の顧客対応が丁寧かどうかや、情報セキュリティが強固であるかどうかもチェックのポイントです。

手数料の確認

業界経験が豊富な業者は、取引規模や債権の質に応じて柔軟な手数料設定を提案します。手数料の計算根拠も明確に説明できる業者を選びましょう。特に初回取引時は複数の業者から見積もりを取得し、市場相場を把握することが重要です。

一般的に、手数料は取引金額の3パーセントから10パーセント程度が相場です。この範囲を大きく超える手数料を要求する業者や、手数料の計算根拠が曖昧である場合、実質的に高金利の融資契約と判断される可能性が高いでしょう。

まとめ

ファクタリングを活用する際、違法な取引や不適切な業者に巻き込まれないためには、契約内容と業者の信頼性を慎重に見極めることが不可欠です。本来のファクタリングは「債権譲渡契約」であることを、認識しておきましょう。

信頼できるファクタリング業者を選ぶには、業界団体への加盟状況を確認することが第一歩です。また、契約書の内容が明確かつ透明性が高いかを確認し、不明点がある場合は専門家に相談することをお勧めします。

手数料についても、適正な範囲内で設定された手数料かどうかを確認し、初回取引時には複数業者の見積もりを比較することで、業界相場を把握しておきましょう。

違法な取引を回避するためには、経営者自身が知識を身につけ、慎重な判断を心がけることが何より大切です。本記事で紹介したポイントを活用し、事業を守るための安全なファクタリング取引を実現してください。

この記事を書いた人

ファクタリングの 達人編集部のアバター

ファクタリングの 達人編集部

自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。

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