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資金繰りに悩む経営者にとって、ファクタリングと貸金業による融資は重要な選択肢となっています。似ているように見えるファクタリングと融資ですが、全く異なる性質の資金調達手段です。経営判断に必要となる両者の違いや特徴、活用方法について詳しく解説します。
ファクタリングと貸金業について、その違いが分からない人もいるでしょう。純粋なファクタリングは、貸金業には該当しません。債権売買という、貸金業とは全く異なるビジネスモデルです。資金調達を検討中の経営者が混同しやすい点について、分かりやすく説明します。
ファクタリングとは売掛債権や請求書を買い取ることで資金を調達する方法です。事業主が保有する売掛金や請求書を、専門業者が一定の手数料を差し引いた金額で買い取ります。買い取った債権は業者の所有物となり、取引先から支払いを受けることで取引が完結します。
売掛債権の譲渡によって資金が調達できる仕組みは、民法上の債権譲渡制度に基づいたものです。業者は債権を買い取る形で資金提供を行うため、融資とは本質的に異なる取引となります。
手数料は債権額面から購入額を差し引いた金額で算出されますが、その設定には売掛先の信用力や支払期日までの期間などが影響します。例えば、支払期日が2か月先の場合と4か月先の場合で手数料率が異なるのはそのためです。
貸金業が金銭の貸付を行うのに対し、ファクタリングは債権の売買取引です。売買取引であることから、貸金業法の規制対象外となります。金銭消費貸借契約では借入金に対する利息が発生しますが、ファクタリングでは債権売却時に手数料が発生する点も大きな違いです。
金融庁も純粋なファクタリングは、貸金業とは区別しています。債権の買取価格と回収額の差額は利息ではなく、債権売買における売買差額として扱われます。
法律上の取り扱いも明確です。債権譲渡に関する規定は民法に定められており、金融商品取引としての性質を持ちます。貸金業法が定める貸付の概念とは、明確に区別されているわけです。
償還請求権付きファクタリングとは、債権が回収できない場合に売主に返還請求されるファクタリングのことです。実質的な貸付取引と見なされる可能性が高く、貸金業登録が必要となるケースがあります。
具体的には、取引先からの入金が得られなかった場合に、ファクタリング会社が債権売主に対して支払済みの金額の返還を求められる契約です。形式上は債権売買でも、実態としては貸付に近い性質を持つと判断されます。
給与を債権として買い取ってもらう給与ファクタリングも、実質的な貸付と判断される傾向にあります。2023年には貸金業法の規制強化により、給与ファクタリングに対する監督が厳格化されました。
ファクタリングと貸金業では、契約形態から審査基準まで様々な違いがあります。適切な選択をするためには、両者の特徴を正確に理解することが重要です。実務面での違いを中心に、詳しく見ていきましょう。
ファクタリングは債権売買契約に基づく取引です。
事業主が売掛金や請求書という債権を、ファクタリング会社に売却することで資金を得る仕組みです。返済義務は発生しません。
債権の所有権が業者に移転し、取引先からの支払いも業者が受けることになります。
契約書の内容も大きく異なります。債権の特定や譲渡条件、手数料の計算方法などが明記され、債権譲渡通知の取り扱いについても定められます。多くの場合、取引先への通知は業者が行う形です。
一方、貸金業は金銭消費貸借契約を締結します。
借入金に対する利息と返済義務が発生し、約定通りの返済が求められます。
返済が長期にわたって滞ると、利息の上乗せや信用情報機関への登録といった不利益が生じることは避けられません。
ファクタリング会社は取引先の支払能力を重視します。売掛先である取引先企業の与信状態が良好であれば、資金調達者の業績や財務内容が多少悪くても融資を受けられます。
審査のポイントは取引の実在性です。請求書や納品書などの証憑書類(しょうひょうしょるい=取引事実が合ったことを証明する書類)を確認し、取引の内容や支払条件を精査します。取引先との取引履歴や、支払実績なども重要な判断材料です。
一方、貸金業者は申込者自身の返済能力を審査します。事業の収益性や返済実績、個人の信用情報などが重要な判断材料となります。取引先の与信状態は二次的な要素に留まるのが一般的です。
貸金業は貸金業法による厳格な規制を受けます。金利は利息制限法の上限を超えることができず、貸付審査や取り立て行為にも細かな制限が設けられます。登録業者以外の貸付は違法です。
取り立て行為にも規制があります。深夜の電話や第三者への取り立てなどは禁止されており、違反した場合は行政処分の対象となります。債務者の返済能力を超える貸付も禁止です。
純粋なファクタリングは貸金業法の適用を受けません。ただし、債権売買の実態を伴わない場合や、実質的な貸付と判断される場合は規制対象となる可能性があります。手数料設定も比較的自由度が高いです。
事業規模や資金需要によって、最適な資金調達方法は異なります。経営状況や目的に応じた選択が、健全な資金繰りを実現するポイントです。状況別に見た特徴を詳しく解説します。
ファクタリングは 短期的な運転資金の調達に適しています。売掛金や請求書さえあれば、担保や保証人がなくても利用できる点が魅力です。銀行融資の審査が通りにくい業種や、創業間もない企業にとって有効な選択肢となります。
業績が一時的に悪化している場合でも利用を視野に入れるとよいでしょう。取引先の信用力が高ければ、自社の業績改善までの繋ぎ資金として活用できます。季節性の強い事業の資金繰り対策としても効果的です。
即日での資金調達にも対応可能です。手続きが比較的シンプルで、審査から入金までのスピードが速い特徴があります。 急な支払いが発生した際の資金確保に役立ちます。
貸金業の借入は、 長期的な設備投資や事業拡大の資金に適しています。返済計画が立てやすく、計画的な資金運用が可能です。比較的低金利での借入ができる場合もあり、コスト面でメリットが出やすいです。
借入は 定期的な返済が可能な事業者に向いています。月次の返済負担を考慮した借入額を設定することで、返済原資の確保がしやすいでしょう。事業計画に基づく設備投資など、長期的な資金調達に適しています。
大口の資金需要にも対応できます。売掛債権の金額に制限されないため、必要額を調達しやすい点が特徴です。複数の融資を組み合わせることで、柔軟な資金計画が可能です。
事業計画との整合性を確認することが重要です。短期の資金需要なのか、長期の設備投資なのかによって、選択肢は変わってきます。返済負担や手数料も、事業の収益性と照らし合わせて判断する必要があります。
信用情報への影響も考慮すべきです。貸金業による借入は、返済を滞納してしまった場合に信用情報に記録が残ります。ファクタリングは債権売買のため、原則として信用情報には影響しません。将来の資金調達への影響を考えた選択が求められます。
実質的なコストも比較検討しましょう。
ファクタリングの手数料と貸金業の金利を単純比較するだけでなく、諸費用や返済期間なども含めた総合的な判断が求められます。
ファクタリングは債権売買による資金調達、貸金業は金銭の貸付という基本的な性質の違いがあります。短期の運転資金にはファクタリング、長期の設備投資には貸金業というように、資金需要に応じた使い分けが望ましいでしょう。経営者は事業計画や財務状況を見極めながら、最適な資金調達方法を選択することが重要です。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。