ファクタリングでオフバランス化? 財務体質改善のメリットと注意点

財務体質を改善させる方法として、ファクタリングの活用によるオフバランス化が重要視されています。オフバランス化とは、貸借対照表の項目を減らし、スリムにすることです。

本記事では、ファクタリングによるオフバランス化の基礎から、オフバランス化のメリット・デメリット、会計処理の方法まで詳しく解説します。

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オフバランス化とファクタリングの基礎

オフバランス化とファクタリングの基礎

オフバランス化は貸借対照表の項目を減らすことで、スリムになった状態のこと。企業の財務体質を改善させる方法の一つです。ファクタリングを組み合わせることで、会社の信用度向上につながるなどのメリットがあります。

ここではまず、オフバランス化やファクタリングの関係について紹介しましょう。

オフバランス化とは何か

オフバランス化とは、貸借対照表(バランスシート)から特定の資産や負債を除外する手法です。

一般的に売掛金や在庫などの資産、借入金などの負債が対象となります。

項目を除外することで、見かけ上の総資産や負債を減らすことが可能です。結果として自己資本比率が改善されて企業の信用力向上につながります。

一般的には、売掛債権の売却やリース取引の活用で行われます。売掛債権売却の場合、債権を買い取った会社が回収リスクを負うため、売却企業の財務諸表からは完全に除外されるのです。

ファクタリングでオフバランス化できる?

ファクタリング会社へ売掛債権を売却する場合は、一定の条件下でオフバランス化が可能です。

売掛債権の所有権が完全にファクタリング会社へ移転し、償還請求権が付与されていない場合に限り、オフバランス化の要件を満たします。

ファクタリング契約時に「ノンリコースファクタリング」(償還請求権なし)を選択することで、確実なオフバランス化が実現できます。通常のファクタリングと比べて手数料は高くなりますが、財務改善効果は絶大です。

オフバランス化の具体的な事例

製造業では、大口取引先への売掛金をファクタリング会社へ売却するケースが多く見られます。月商1,000万円規模の中小製造業で、売掛金2,000万円をオフバランス化した結果、自己資本比率が15%から25%へ改善した事例があるのです。

サービス業においても、継続的な取引から発生する売掛金のオフバランス化により、財務体質の改善が期待できます。月額制のサービス提供企業では、将来の売掛金を早期に現金化することで、事業拡大資金を確保した例もあります。

なお、中小企業で実践する場合には、まず主要取引先の売掛金から段階的に始めることが重要です。

すべての売掛金を一度にオフバランス化するのではなく、財務状況を見ながら徐々に範囲を広げていく戦略が基本です。

オフバランス化のメリット・デメリット

オフバランス化のメリット・デメリット

財務改善策としてオフバランス化を検討する企業が増加しています。ここでは、経営判断に際して重要となるメリット・デメリットについて、実務的な観点から解説していきしょう。

オフバランス化のメリット

オフバランス化による財務指標の改善効果は、即効性があります。総資産が減少することで自己資本比率が向上するため、企業の信用力アップにつながります。実際に自己資本比率が10%以上改善したケースも珍しくありません。

また、資金調達力が向上する点も見逃せません。銀行からの融資審査において、財務指標は重要な判断材料となります。オフバランス化による指標改善は、新規融資の可能性を広げる効果があるのです。

さらに、売掛金が減少することで運転資金の確保が容易となるメリットもあります。新規事業への投資や設備投資がスピーディーになるため、経営を早期に改善できるようになるでしょう。

オフバランス化のデメリット

オフバランス化にはデメリットもあります。オフバランス化することで負債のリスクを減らせますが、現金化できる資産は減少してしまいます。すぐに資金調達が必要な場面で不利な状況に陥る可能性が考えられるでしょう。

また、資産を減らすことにより、リースやレンタルにかかるコストが上乗せされ、トータルコストが高くなるリスクも否めません。

さらに、貸借対照表に記載されない項目があることから、粉飾決算として悪用されるリスクも。不正会計につながらない仕組みづくりが大切です。

実務での活用ポイント

最適な活用タイミングは、企業によって異なります。

決算期前の財務改善が目的なら3ヶ月前からの準備が望ましく、融資審査対策なら6ヶ月程度の余裕をもって開始するとよいでしょう。

社内体制の整備では、経理担当者への教育が重要です。仕訳方法や管理帳票の整備など実務面での準備が求められます。

リスク管理では、取引先の支払い状況モニタリングが重要です。仮に支払遅延や回収トラブルがあると、オフバランス化の継続に影響を及ぼす可能性が高いため、余裕を持った試算を行いましょう。

ファクタリングの会計処理:オフバランス化の仕訳

ファクタリングの会計処理:オフバランス化の仕訳

会計処理の正確性は、経営の根幹を支える重要な要素です。ここでは、オフバランス化に関する仕訳方法について実務的な観点から解説していきます。

オフバランス化の具体的な仕訳方法

基本的な仕訳パターンとして、売掛金の消し込みを行います。具体的には、債権売却時に「現金」と「売掛金」の勘定科目を使って、差額を手数料として処理するのです。

しかし、特殊なケースでは取引先からの入金が発生した際の処理方法が変わります。特にファクタリング会社への支払いが発生した場合は、別途「未払金」勘定での処理が必要になるのです。

会計ソフトでの入力手順は、取引の都度入力する方法と月次でまとめて処理する方法があります。

企業規模や取引量に応じて、効率的な方法を選択するとよいでしょう。

税務上の取り扱い

法人税の処理では、売却損益の認識時期が重要です。債権売却時に損益計上するのが原則ですが、継続的な取引の場合は期間按分も認められる点に気をつけましょう。

消費税の取り扱いでは、債権売却時の課税関係にも注意が必要です。手数料部分は課税取引となりますので、適切な処理が求められます。

税務調査での注意点として、債権売却の実態確認が挙げられます。形式的なオフバランス化と判断された場合、更正処分のリスクが生じる可能性があるため要注意です。

導入時の実務フロー

オフバランス化における社内規程の整備では、取引開始から終了までの一連の流れを文書化します。担当者の役割分担や決裁基準なども明確化しておく必要があります。

取引先への説明も、慎重に行う必要があります。経営状況の悪化と誤解されないように、財務戦略の一環である点を強調しましょう。

オフバランス化に関するよくある質問

オフバランス化に関するよくある質問

オフバランス化は繊細な取り組みであるため、税金などに関する質問が多いです。そこでよく寄せられる質問や回答を紹介します。

オフバランス化すると、税金はどうなるか?

税務上の処理は、通常の売掛金回収と変わりません。売却損益は発生時に計上され、手数料は経費として認識されます。売掛金の消滅は税務上も認められ、貸倒引当金の計上対象からも除外できるのです。

ただし、実質的な金融取引と判断された場合は異なる処理が必要となる場合もある点に注意しましょう。

オフバランス化は、どのような企業におすすめか?

オフバランス化は、財務指標の改善が急務である企業におすすめです。自己資本比率が低く、銀行からの融資獲得に苦心している企業では、即効性のある対策として役立ちます。

また成長期の企業でも、活用価値は高いです。増加する運転資金需要への対応や新規投資のための資金確保でも活用できるでしょう。

まとめ

オフバランス化は、財務体質を改善させるために有効な手段です。しかし、導入する場合には手数料などのコストや効果のバランスを見極める必要があります。

財務戦略の選択肢として積極的に検討する価値はありますが、企業規模や事業特性に応じた慎重な判断が求められるでしょう。

この記事を書いた人

ファクタリングの 達人編集部のアバター

ファクタリングの 達人編集部

自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。

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